ミドルエイジ(中年期)をどう生きるのか②夏目漱石の門 〜中年の門をくぐる 〜

 
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中年の危機(中年クライシス)で立ち止まっている、もしくは荒れまくっている方が多いように思います。
 
そこで、河合隼雄先生の『中年クライシス』をもとに、中年期をどう生きるかをテーマにした小説を紐解いていきたいと思います。
 

夏目漱石「門」

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主人公の宗助は、妻のお米と一緒に二人でひっそりと仲良く暮らしています。
この夫婦を象徴する彼らの住む家のことをこのように表現しています。家のすぐ前を崖がそびえているので、いつ崩れるか分からない。
これこそがまさに『中年の家』の象徴であるということです。
 
これは、崖の近くに住むことは危ないですよ、ということではなく、家族の土台であり、大人とされる人たちのアイデンティティーの脆弱さのようなものを象徴しているのです。
 
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本来なら、中年に差し掛かる夫婦の関係は、宗助とお米のようにはなかなか仲良くいかないと思います。

この二人がなぜ仲良くひっそりと暮らしているのかというと、そこには二人が同じ罪を犯したという後ろめたさがあったからだと思います。
 
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この二人が何をしたのかというと、学生の時に元もと宗助の友人だった安井という男の妻だったお米と知り合い、友人を裏切って結婚したという過去があったのです。
彼らは親を棄てた。
 
親類を棄てた。
 
友達を棄てた。
 
大きく言えば一般の社会を棄てた。
 
もしくはそれらから棄てられた。
 
〜夏目漱石「門」より〜
他には味方がいないから、余計に肩を寄せ合うのです。
こういった過去を持ちながら二人は、『崖』の前の家にひっそりと暮らしています。

これは、ゲス不倫はいけないことですよーという話ではなく、私たちにはちょっとしたきっかけでいつでもこのような状況に陥る可能性はあるということではないでしょうか。

 

『Xの存在』

中年クライシスで河合隼雄先生が表現した『Xの存在』。
 
Xというのは、突然不用意の二人を吹き倒す大風ということですが、この二人にとっては『安井』だけども、普通の夫婦にとっては、子供であったり、病気や事故、またはお酒や仕事、愛人などなどではないでしょうか。

ただ、この二人の関係は、少し特別な事情があって、『Xの存在』が同じということ、つまり過去の共犯という絆の強さがあって唯一の味方という見方もできるので、仲良くしています。

もしこれが何の問題もないご夫婦だったとすれば、互いにうまくいかない原因を互いに求め、『あなたこそがXの存在だ』と責め合っているのではないかと思います。

 
このように、人は自分以外に原因を求めて外に目を向けてしまいがちですが、本当は自分のうちに潜む『Xの存在』が一番危うくコントロール不能なようにも思えます。
 
また、中年とはそのような危うい部分が出てしまいやすい、時期と言えるのかもしれません。

中年の危機?

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話は戻りますが、このようなひっそりとした二人の関係は、後半で大きく揺らぐことになります。

この崖の家の家主の息子が、『安井』という友人を連れて帰省するということを家主から聞きます。
そして、宗助はその宴会に呼ばれてしまうのです。

 
『安井』は宗助にとって過去に犯した罪の象徴であり、自分のなかに潜む『Xの存在』を証明するような存在なのです。

このことをお米に伝えることもできずに、宗助は苦しみます。

 
そして、突然、禅寺にこの苦しみの答えを見つけに行こうとするのです。

そこで寺の人からテーマとして与えられたのが『父母未生(ぶもみしょう)以前本来の面目』でした。

 
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これは自分の父や母が生まれる前、あなたはどこにいたの?という素朴な疑問です。

父親や母親が生まれる前など、私たちは存在するはずもありません。そのことについて考える、つまり、今の私は偶然のご縁によって導かれたものであって、偶然に今存在しているとしか言いようがないのでしょう。

宗助はこの難しいテーマの答えを見つけることができずに、家に帰ります。

門にこのような一文があります。

 
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彼は悟という美名に欺かれて、彼の平生(へいぜい)に似合わぬ冒険を試みようと企てたのである。
〜夏目漱石「門」より〜
 
悟という何かカッコイイ言葉に惹かれて、彼らしくない思い切った挑戦をしてみたけれど、いつもやっていないことなので簡単に失敗しちゃったのですね。
 
まさに中年の危機といった感じがします。
 
今まで取り組んでも来なかった、自分の内面に取り組もうと努力したものの、結局途中で挫折してしまうといった感じではないでしょうか。
 
 

門とは中年の入り口であり、老いの入り口でもある

宗助のこういった努力というか、取ってつけたような浅はかな期待のようなものに対して、『門』という言葉で表現した一文があります。
 
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彼は門を通る人ではなかった。
また門を通らないで済む人でもなかった。
要するに、彼は門の下に立ちすくんで、日の暮れるのを待つべき不幸な人であった。
 
〜夏目漱石「門」より〜
このタイトルでもある『門』は、中年の入り口であり、老いの入り口を意味しているようです。
 

なぜか好転する状況

このように、宗助の期待通りの答えや悟を得られずに家に帰るのですが、なぜか状況は少しだけ好転していきます。

留守の間に来たとされる『安井』と妻は会うことはなかったようだし、同居していた弟は家主に居候させてもらうことになったし、役所での給料も少し上がったとのこと。

このように中年の危機というのは思いがけなくやってくるが、それはまた思いがけなく解消して行くときもあるということを示唆しているように思えます。

 
これは、何もしなくても良いということではなく、自分なりに右往左往しているうちに、季節が冬から春へと自然と移り変わるように、状況も変わっていくという意味ではないでしょうか。

ここに、中年クライシスの河合隼雄先生の解説を紹介します。

宗助は、せっかく門を叩いたのだが、開けてもらえなかった。門を通らないで済む人でもないと自覚しつつ、門を通れないし、門の下に立ちすくんでいるより仕方のない自分を見出したのである。しかし、中年の門というのは、こんなものではないだろうか。
下手にさっと通れば、『あちら(死)』に行ってしまうのではなかろうか。すぐに『あちら』に行くことはないにしても、『老い』の世界に入ってしまうのではなかろうか。
門の下に立ちすくんで、何とかならぬものかと色々やっていると、ジワジワと明るみが見えてくるのだ。
 
河合隼雄 中年クライシス
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中年とは、壮年だ(血気盛んな年ごろ。働き盛りの年齢の者。)と何も考えずに前だけを向いて歩くのも素晴らしいとは思う。
 
でも、せっかくこの世に生まれてきたのだから、春とか夏だけを謳歌するよりも、寂しげな秋や、凍えるような冬を全て味わう方がきっと面白いと思う。

私の感想

確かに、さっと門をくぐるのがうまい人もいるような気がします。
 
九星で言えば、二黒さんとか、八白さんなどは門をくぐるのがうまいように思えます。

苦戦しているのは、『若さ』で勝負できた方たちだと思うのです。

でも、そんな方たちもなぜ苦しむのかというと、『ただの年寄り』にはなりたくないという精一杯の悪あがきなのかもしれません。
 
つまり今まで強気で外と戦ってきた方達の次の戦い、それが『自分との戦い』なのだと思います。この逃げ場のない難しさこそが『中年の危機』なのではないでしょうか。
 
 

何も考えずに老人の門をくぐったら?

 
ただし、ここで何も考えずに老人の門をくぐった場合、私たちはどうなるのでしょうか?
 
最近の高齢者の事件にあるように、自分の身の置き所がない理由を、家族や社会・・つまり、自分以外のすべてが悪いと決めつけて、恨みながら復讐をして死んでいくという事件などにつながってしまうように思います。

中年の危機はあくまでも、中年の生きづらさの原因を全部ではないにしろ、一定の割合で『自分』に原因があると認めている方たちの、通るべき苦しい『門』であるように思いました。

 
やっぱり自分に向き合うのが一番苦しいですから。
 
それに必死に取組んでいる仲間達が結構多いのだ!ということではないかとこの本を読んで改めて感じました!!
 
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はい、お疲れ様でした。ミドルエイジをどう生きるのか、のテーマで読書会を勝手に開きました。

夏目漱石の『門』はいかがでしたでしょうか?
 
もしかすると、家の本棚に紛れ込んでいるかもしれないので一度読んでみてください。
案外読みやすかったです。
 

次は

次は、不揃いの林檎たちを書かれた、山田太一さんの『異人たちとの夏』を読んでみたいと思っています。
 
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この本もとっても面白そうなので、私はアマゾンで買いましたが、あなたも年末年始の意外に暇な時間に読んでみてはいかがでしょうか。
では、次回は1月にお会いしたいと思います。ありがとうございました。

夏目漱石「門」
山田太一「異人たちとの夏」
広津和郎「神経病時代」
大江健三郎「人生の親戚」
安部公房「砂の女」
円地文子「妖」
佐藤愛子「凪の風景」
谷崎潤一郎「蘆刈」
本間洋平「家族ゲーム」
志賀直哉「転生」
夏目漱石「道草」

今後ともよろしくお願いいたします。

 

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